【前ばなし場面における大もととなる設定の確認】
本時の授業で特に確認されたのは、「人物(状況)」に関する内容でした。
・ギャオギャオ王子(六才にもなっていない。)
・都の人々
このおさえがその後の展開の伏線になります。
【三つの問いへの答え】
次に三つの問いへの答えが確認されます。
・何が変わったのか?
王子の心
・どのように変わったのか?
やかましい心→しずかな心
やかましい音が好き→しずかな自然の音が好き
おちつきのない心→おちついた心
・どうして変わったのか?
クライマックス場面の前の5の場面で、
一人のおくさんが世界でいちばんやかましい音を聞いてみたいと考え、
声を出さないことにした。それがだんだんみんなに伝わったから。
【子供たちの読みを深める①】
ここまでは、二瓶学級の子供たちの「いま読めている読み」です。
二瓶先生は、『物語授業づくり入門編』で次のように書いています。
「我々教師がすべきことは、子供の段階を見つつ、子どもの読みを大切にすること。子どもの『いま読めている読み」をさらに深めること。見えなかったものを見せることで、読みを広げてやること。・・・・・・それが子どもの読みを大切にするということです。」
「見えなかったものを見せることで、読みを深め広げる」ために二瓶先生がまず子供たちに仕掛けたのは、「前ばなしと後ばなしとを対応させること」でした。
これは、物語における変化を読み取るための方法です。この方法を子供たちは、「かさこじぞう」の読みで学習しています。そのことを思い出させ、それをここであらためて意識させ使わせたのです。
学んだ用語や方法がすぐに「自力読み」の力となるわけではありません。用語や方法を意識し、実際に使わせ、その有効性を納得させていくことの繰り返しによって、身に付き、自ら使える武器になるのだ、 と思いました。そのためには、そうしたことが可能になる教材を用意し、見通しを持って学習を組織していかなければなりません。指導の系統性を考えるということがどういうことか少しわかったような気がしました。
「前ばなし」と「後ばなし」では、大きく変わった都の様子が書かれています。両者を対応させることによって、「何が変わったのか?」という問いへの答えが「王子の心」だけではなく「都全体」である、という読みへ広がりました。
都全体が変化したことは、子供たちにとっても明らかなことでした。
では、「どのように変わったのか」、やかましい町から静かな町へ、こうした変化も明らかなことでした。しかし、このような大づかみな読みでは、「王子の心」の変化と内容的に変わるものではありません。
二瓶先生は、文章の一つひとつの言葉に目を向けさせました。作品自体が「前ばなし」と「後ばなし」とで対となる表現をしているのです。そのことを先生は、『物語の「自力読み」を獲得させよ』でも取り上げ、対応表を示しています。
時間があれば、ここで「詳細な読解」をさせてもいいところでしょう。一つひとつの言葉の表面的な意味からさらに解釈を深めていくと、「作品の心」へつながる意味が豊かに取り出せる、そうした作品なのです。先生は、著書の中で、「話す」という言葉、「ようこそ」という言葉などにさらりと触れています。これらの言葉は、先生自身の「作品の心」につながっています。
今回の授業では、対応する言葉のおさえはしましたが、一つひとつのこまやかな解釈までは踏み込みませんでした。 次の仕掛けとなる一語へと向かいました。
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