◆「世界でいちばんやかましい音」の授業
【本時までの子供たちの読み】
本時以前に、一人の子供がまとめた『物語「世界でいちばんやかましい音」のしくみ」がコピーされたプリントが資料として配布されました。(『「物語の授業づくり入門編」p66~67に載っている2年生のものと比べると子供たちの歩みがわかるようです。)
そこでは、この作品の場面分け、あらすじ、基本4場面、前ばなし場面の大もととなる設定、大きな三つの問いの答え、そして作品の心がおさえられ、書かれている。
プリントされた子は、「大きな三つの問い」の答えを次のように書いている。
①何が変わったのか
王子様の気持ち
②どのように変わったのか
やかましい(とげとげしい)心→しずかな心
③どうして変わったのか
5場面のおくさんがだまっていようと考え、
世界中の人にその考えが伝わったから。
そして、「作品の心」を次のように書いている。
生きていれば、思い通りにならないこともある。
でも、それをどう生かすかによって良い方向に進むこともある。
これらは、この子たちにこれまで二瓶先生が獲得させてきた自力読みの力を示すものでしょう。
こうした読みの上で本時の授業が展開されたのでした。
【前時までの学習の確認】
授業のはじまりで、二瓶先生は、前時までにおさえていた基本4場面などを確認しました。
物語のしくみとしての「前ばなし」「出来事の展開場面」「クライマックス場面」「後ばなし場面」、これらの意味を確認し、この作品の場面と対応させました。
上の読みの観点として用語の意味の確認は、発表させるだけでなく、以前に書かせたものを読み直させたりペアで言わせたり、かなりしつこくやっていました。
子供たちは、すでにこれらの観点を使って自力で読みをまとめています。それを考えると、この時間の確認はそれほどきっちりとやらなくてもいいような気もします。
これらの用語は、二瓶先生が吟味した意味を持つものです。その意味を理解し、しっかりと身に付けることが二瓶先生の考える自力読みの土台になります。
用語の意味の理解は、ただ単に言葉を暗記することではありません。それは抽象的な言葉ですが、実際に作品を読むときに具体的に機能する言葉でなければなりません。子供たちが用語によって作品へ具体的な働きかけを行った上で、その意味を再確認することが本当に理解し、身に付けることになるのでしょう。
また、このように子供たちのためというだけでなく、授業を参観する私たちに用語を理解させるためだったのではないか、とも思われます。(むしろその方が大きかったかもしれません。)
物語のしくみを確認し、そうすることがなんのためなのかも確認していました。
何が、どのように、そしてどうして変わったのか、という三つの問いに答え、作品の心を考えるためであることを確認したのです。物語のしくみ、それを確認するだけなら、それはただのゲームみたいなものだとも子供たちに話していました。
二瓶先生は、それぞれの読みの観点・用語による文章全体の読みを「三つの問い」に焦点化させます。そして、「三つの問い」の答えによって読みを方向づけた上で、「文章の詳細な読解」を向かわせ、答えを再検討させます。このような方向づけられた文章に即した読みを土台に、目標(ゴール)である「作品の心」を深めさせるのです。
ここに、二瓶先生の物語の読みの授業論の肝があると思います。
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