2011年2月17日木曜日

青山由紀先生の授業を見る②

何を使わせ身に付けさせるのか?
といえば、それは各教科における「基礎的・基本的な知識・技能」とされている。

学習指導要領に示された国語科、低学年の説明文の読みに関する指導事項は、以下の通り。

時間的な順序や事柄の順序などを考えながら内容の大体を読むこと。

これだけでは、使いものにならない。身についたかどうかもはっきりしない。
これをさらに具体化しなければならない。

青山先生は、単元の目標を以下のように設定した。

・「問い」と「答え」の関係に着目しながら、内容を読む。
・時間や順序を表す言葉に着目して、複数の動物の赤ちゃんの特徴や違いを読み取る。
・説明の仕方(述べ方)の工夫に気付く。
・取り上げられている動物の関係を考える。(事例の選択)
・説明文を多読する。
・自分の好きな「どうぶつの赤ちゃん」について調べ、述べ方を使って説明文を書く。

単元計画では、学習材に即してさらに具体化された内容が書かれている。

・主語連鎖に気付き、意味段落を意識して読む。
・共通の観点について「ちがい」が述べられていることに気付き、内容を読み取る。
・なぜ、ライオンとしまうまの赤ちゃんが取り上げられているのか(事例の選択意図)を考える。

学習材「どうぶつの赤ちゃん」は、はじめに問いの意味段落があり、続いて「ライオンの赤ちゃん」「シマウマの赤ちゃん」「カンガルーの赤ちゃん」と答えとなる事例の意味段落が列挙されていく。
そして、それぞれの意味段落は、共通の観点で記述された3つの形式段落で構成されている。
1年生の典型的な説明文である。
こうした学習材の特性から、使えて身に付く基礎的・基本的な「ことばの力」をいかに取り出すか、これが重要なのだ。

例えば、主語連鎖に気付く、ということについて。
「ライオンの赤ちゃん」の意味段落では、3つの形式段落がそれぞれ「ライオンの赤ちゃん」という主語で始まる。
こうした主語連鎖に気付くことは、この3つの形式段落が「ライオンの赤ちゃん」という話題について述べられたひとまとまりの文章であることがわかることであり、「内容の大体」をとらえる第1歩となる。
さらに、こうした言葉の繰り返しへの気付きは、他の事例の意味段落との比較において、同じ言葉(観点を示す)、異なる言葉(事例の特徴を示す)への気付き、すなわち「共通の観点について『ちがい』が述べられていることに気付く」ことにもつながるだろう。
ここまでくれば、「内容を読み取る」ことにもなるだろうし、対比という思考を促し、それは「事例の選択」を考える土台にもなる。

このように具体化された「ことばの力」は、有機的に関連づけられ使える力となっている。スキル学習的に主語連鎖を取り出すだけでは、使える力とはならない。

授業後の説明会で、「事例の選択」について先生が語った。
「事例の選択」について考えることは主に中学年前半の課題であり、その「順序」について考えることは中学年後半の課題である。
さらに、高学年では事例によって抽象的な主張に説得力を持たせる効果を考える課題へと発展していく。
具体化された「ことばの力」が横の関連だけでなく、学年段階に即した縦の関連でも構想されているのである。

何を=どのような「ことばの力」を獲得させていくのか。
学習材に即して、具体的に取り出せなければならない。
それぞれが有機的に関連し合い、使え、発展する力でなければならない。

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